つくし公園の春から夏に咲く草花

アグロステンマ (Agrostemma)
アグロステンマという名前は,ギリシア語またはラテン語のagros(野原・畑)とstemma(王冠)の組み合わせで,花の形を冠に見立てたもののようです.葉が麦に似ている,あるいは,麦畑に交じって生えることから,和名では「麦(むぎ)仙翁(せんのう)」または「麦ナデシコ」と呼ばれています.なお,「仙翁」(せんのう)とは京都の仙翁寺(現在は廃寺)で見られたナデシコの一種です.4月から7月頃にかけて白またはピンク色の花をつけます.原産地は,欧州から西アジアにかけての地中海沿岸地域で,日本には麦とともに明治時代に到来したようです.
アリッサム (Alyssum)
3~5月頃に小さな黄色の花が放射状に集まって咲きます.原産地は地中海周辺地域(中欧・南欧~西南アジア・中央アジア~北アフリカ)です.分類学的にはアブラナ科 のアレチナズナ属(アリッサム属)とされています.なお,スイート・アリッサムなど「アリッサム」の名で呼ばれているもの(花の色も白やピンク,紫色,赤茶色,クリーム色など多様)には別の属のものもあるようです.
おだまき (苧環)
キンポウゲ科の多年草で,高山に自生するミヤマオダマキから観賞用に栽培改良されました.初夏から夏にかけて紫色の花をつけます.「おだまき」の名前は,花が内側に曲がって満開せずに丸みのある形をしていることから,これを「苧環」 (つむいだ麻糸を空洞の玉のように巻いたもの)に見立てて付けられました.別名の「糸繰草(イトクリソウ)」も紡いだ糸を巻きつけた糸巻き「糸繰り」にちなみます.
名前のもととなった「苧環」に関連して,義経記には,静御前が義経を慕って読んだとされる「しづやしづ賎(しづ)のおだまき繰り返し昔を今になすよしもがな」(静よ静よと繰り返し私の名を呼んでくださったあの昔のように懐かしい判官様の時めく世に今一度したいものよ)の歌が収められています.

金魚草
草丈も20cm程度までの矮性種から1mを超す高性種まで,花についても,白や赤,ピンク,オレンジ,黄,複色などバラエティに富んだ色で,形も一重咲きや八重咲き,釣鐘型(ペンステモン種)ながあって,極めて多様です. 華やかで集合的に咲いて賑やかさのある花は5月頃が開花の最盛期で,甘い香りがあります.英語では竜に見立ててsnapdragonと呼ばれます.
分類上はオオバコ科(以前はゴマノハグサ科 とされていました) イワブクロ属(ペンステモン属)で,原産地は地中海沿岸地域(ペステモン種は北米西部)です.金魚草全般の花言葉は「おしゃべり」です.花の横を軽くつまむと口を開くように見えるために,この花言葉がついたとの説もあるようです.

スイートピー (sweet pee)
原産地はイタリアのシチリア島で,1695年に修道僧クパーニが発見し,その後イギリスで園芸植物として発展し,19世紀後半になるが様々な品種が開発されました.花の色も,白や赤,ピンク,紫,青,黄などさまざまです.花言葉は「別離」や「門出」です.
和名では,ジャコウ(麝香)エンドウあるいはカオリ(香)エンドウと呼ばれますが,種や種を包むさや(莢)には毒性があり,多量に摂取すると人では麻痺による歩行異常,動物では骨格異常が起きる可能性があります.分類学的には,マメ科のレンリソウ属(ラティルス属)です.
マーガレット (marguerite, margaret)
スペイン領カナリア諸島原産のモクシュンギク(木春菊)をベースに,近縁種をかけ合わせて作られた園芸品種です.原種は白い花をつける高さ1mほどの灌木だったようです.マーガレット(marguerite)という名前 は,白い花から連想される真珠のギリシャ語「margaritēs」に由来しているとされています. 園芸種のマーガレットの花は,一重や丁字,八重,ポンポン咲きなど変化に富んでおり,色も白やピンク,赤,クリーム,黄,薄いオレンジなど多様です.分類学的にはキク科のモクシュンギク属(アルギランセマム属)とされています.